鳥人間入門

☆飛行の理論

1章:相対速度
2章:抵抗(抗力)について
3章:尾翼の働きについて



1章:相対速度

物体が流体中を運動しているときの状態は、その物体を静止させ流体を運動させたときの状態と等しい。(下図)

相対速度

翼の性能は、その断面型と平面形によって決まる。まず翼の断面型の特徴を考える。(下図)

翼型

翼のまわりの流れを詳しく調べると、翼の上面では流速が大きく、下面側では流速が小さいことがわかる。(下図)

速度差

ところで流体について、次の式が成り立つ。

ベルヌーイ(Bernoulli)の式
ベルヌーイ(Bernoulli)の式
p : 静圧
ρ : 流体の密度
v : 流体の速度
1/2ρv^2 : 動圧

これにより流速の大きい上面側では圧力(静圧)が小さく、 流速の小さい下面側では圧力(静圧)が大きくなる。 これにより翼のまわりの圧力分布は下図のようになる。 (だいたい)

圧力

次に圧力による合力を考える。この合力は、ある作用点、大きさ、向きをもっている。(下図)

合力
(合力を流れの方向の垂直成分と水平成分に分解する)
垂直方向の力 = 揚力(Lift)
水平方向の力 = 抵抗(Drag)
コードラインと主流方向がなす角度 α = 迎角(Angle of Attack)

合力(揚力と抗力)は、動圧(1/2ρv^2)と翼面積S(翼断面でなく翼平面)に比例するので、 揚力と抗力は次のようにあらわせる。

定理2
C_L : 揚力係数
C_D : 抗力係数
(ともに無次元量)

C_L,C_Dは翼断面形を変えれば当然変わるが、むしろ流れに対する翼の傾き(迎角)に大きく左右される。 また、この傾きに対するC_L,C_Dの変化はほとんどの翼断面形に対して同じような傾向を示す。

揚力線図
揚力線図

抗力線図
抗力線図

C_Lは、零揚力角から失速近くまでほとんど直線的に変化する。また、この間、 C_Dはあまり変化しない。 αが失速角近くまで増えると、C_Lの変化は次第に小さくなり、 ある点でC_L 最大となる。それ以後はαを増すとC_Lが急激に減少する。 このC_L最大の時を失速状態(stall)という。また、この時の迎角を失速迎角という。 一方、C_Dは失速状態となると急速に増加する。 失速とは下図のように、流れが翼のまわりからはがれてしまった状態のことをいう。

失速

翼に働く力をもう一度考える。翼に働く力は迎角の変化によって、 力の作用点、向き、大きさがすべて変わる。(下図)

力の変化

この力の作用点のことを、風圧中心という。とくに作用点が変化すると力の取り扱いが難しくなるので、 翼断面のある一点に注目して、その点に作用する力を考える。 この場合、この点が力の作用点と異なる場合には、 この点には力の他にモーメントというものを考慮する必要がある。(下図)

モーメント

A点にFという力が働くということは、B点にFという力を加え、 さらに、 M=FLというモーメントを加えることと同じである。 翼の場合もある点を考え、その点に作用する力とモーメントを考える必要がある。 ここで、力については今までと同じ考え方でよい(揚力と抗力)。 迎角を変えると力の作用点、大きさ、向きの全てが変わるので、当然モーメントも変化する。 モーメントについても揚力や抗力と同じように、次のようにあらわせる。

定理3
C_M : 縦揺れモーメント係数
C : コード長

この時一般には迎角を変化させると、M、すなわちC_Mが変化するが、 ほとんどの翼には迎角が変化してもC_Mが変化しない点がある。この点を空力中心という。 QX-05の場合は25%コード、すなわちスパーの通っているところがこの点にあたるので、 迎角が変化してもモーメントの変化はほとんどない。


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2章:抵抗(抗力)について

定常状態(等速直線運動)の滑空機に働く力を考える。 作用する力は、空気力と重力のみである。 空気力のうち、進行方向に対して垂直な方向の成分を揚力(L)、 平行な方向の成分を抵抗、または抗力(D)という。 定常飛行状態では、これらの力 (重力、空気力)が釣り合うので下図のようになる。

定常状態

このように見てみると、滑空機ではWsinγが抵抗と釣り合う力、すなわち推力のように働く。 自転車が坂を下るときにペダルをこがなくても前に進むことができるのと同じである。図より、

定理4

であることがわかる。このγが小さければ小さいほど、一定の高度を失う間により遠くまでとべる。また、

定理5

は、1m落ちる間に水平距離で何m飛べるかを示しており、これを滑空比という。 鳥人間コンテストの滑空機部門は、この滑空比を競う競技であるといえる。 滑空比を大きくするには、Lをできるだけ大きく、Dをできるだけ小さくしてやればよい。 ところがLを大きくしようとしても、L<Wという上限がある。実際のところはγは非常に小さいので、 L≒Wと考えるのが普通である。したがって、滑空比L/Dを大きくするには、できるだけDを小さくする必要がある。

飛行機にかかる抵抗は下図のように分類される。

抵抗の種類

抵抗は以下のような式で表す。

定理6
C_D : 抵抗係数(無次元)
ρ : 流体の密度
v : 速度
S : 代表面積

ここで代表面積Sは、普通前方投影面積とするが、 飛行機のような平らなものについては平面の面積、つまり翼面積をとる。

  • 摩擦抵抗
    床の上に置かれたものを押すと、その物体と床との間に摩擦によって抵抗が働く。 これと同じように、物体の表面を空気が流れると、空気の粘性によって摩擦が発生し、 これによって生まれる抵抗を摩擦抵抗という。 例えば、下図のように、流れの方向に平行に置かれた平板に働く抵抗は、ほとんどが摩擦抵抗である。 摩擦抵抗は、物体の表面を滑らかにすることで小さくできる。

    摩擦抵抗

  • 圧力抵抗
    物体まわりの空気の流れがはがれ、後方に渦を作り圧力が低下することによって、 物体を後方に引っ張ろうとするために生じる抵抗。 例えば下図のように流れの方向に垂直に置かれた平板に働く抵抗がこれである。

    圧力抵抗1

    翼の抵抗が失速後急激に増加するのは、失速によって流れが剥離し、圧力抵抗が増加するためである。(下図)

    圧力抵抗2

    圧力抵抗は、空気の剥離を押さえるために物体をいわゆる流線型にすることによって、 空気が滑らかに流れるようにすれば小さくなる。カウル等がこれに当てはまる。

  • 干渉抵抗
    ある物体のまわりの空気の流れは、そばに別の物体をもってくることによって影響を受ける。 したがって、たとえば主翼を胴体を組み合わせると、 胴体と主翼のそれぞれの抵抗を足したものよりも大きな抵抗を発生する。 これは下図のように、胴体と主翼の接合部が滑らかでないためにこの部分の流れが不安定となり、 渦は発生するためである。

    干渉抵抗

  • 誘導抵抗
    誘導抵抗は、普通の翼が揚力を生むときにどうしても発生してしまう抵抗。 翼を前方から見ると下図のように翼の上面と下面で圧力が違う。

    誘導抵抗1

    よって翼全体では下図のような流れが生じる。

    誘導抵抗2

    これによって翼の後方には下図のような渦(馬蹄形渦)が発生する。

    誘導抵抗3

    この渦のために、誘導速度(吹きおろし速度) wを生じる。 このため実際の空気の流れは、Vではなく、下向きの速度成分が加わったV'となる。 これらの様子を下図に示す。

    誘導抵抗4

    Diは誘導速度によって生じた抵抗で、これを誘導抵抗という。 誘導抵抗は翼の平面形を楕円型にすると最小になることが知られている。

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3章:尾翼の働きについて

尾翼がしっかりしたものでないと、飛行機はうまく飛ぶことができない。 尾翼の働きについて考えてみる。 空中の飛行機の動きを下図のように呼ぶことを頭に入れておいてほしい。

動作

まず、軽い棒、例えばバルサの棒を思い浮かべてほしい。このバルサの棒を投げてみる。 矢のように遠くまで飛ばそうと力一杯投げてみても、棒は回転してしまい矢のようには飛ばない。 すなはち、棒の飛行は安定しているとは言い難い。つぎにこの棒の一端に、薄い紙の羽根をつける。 こうすると棒の飛行は少し安定する。 そしてさらに、羽の反対側の端に粘土をつけると、飛行はさらに安定する。

重心

飛行機の安定を保つために、さっきのバルサの紙の羽根の役割をになうのが尾翼である。 また、飛行体の場合、重心は一般に前方にあればあるほど安定である。 厳密にいえば、空気力を発生する部分(先の例では羽根の位置)に対して、 重心が前にあればあるほど安定になる。

  • 垂直尾翼の働き
    垂直尾翼は、機首の左右の動き、すなわちyawingに関する安定を保とうとする働きがある。 この安定のことを、方向安定、または風見鳥安定という。

    垂直尾翼

    つまり、垂直尾翼は飛行機が横滑り(機首方向と飛行方向が一致していない)を起こしたときに、 その滑った方向に機首を向け、再び釣り合った状態に機首を向けようとするのである。

  • 水平尾翼の働き
    水平尾翼は、機首の上下の動き、すなわちpichingに関する安定を保とうとする働きがある。 この安定のことを縦安定という。この縦安定とは、飛行機がある迎角で釣り合って飛んでいるとき、 何らかの原因によって釣り合いが崩され迎角が変化した場合、元の姿勢に戻ろうとする性質のことである。 この縦安定は重心の位置に大きく左右され、重心が後方にあると安定性は悪化し、 逆に前方にあると安定性は向上する。これは先のバルサの例を考えてみてもらうとわかりやすいと思う。 では具体的に見ていく。主翼のみで空力中心(前述)まわりのモーメントを考えると、 頭下げのモーメントが発生している。この主翼の空力中心まわりのモーメントを打ち消してやるために 尾翼がつけられている。

    水平尾翼1

    もう一つの役割について。 今考えやすいように、尾翼は上向きの揚力を生み、 主翼、尾翼のそれぞれの空力中心に集中して揚力が生じていると考える。

    水平尾翼2

    上図において、力、モーメントが釣り合っていると考えられる。

    定理7
    定理8

    さて、何らかの原因でこの機体の迎角がΔα増加したとしよう。 このとき主翼の揚力は、下図のように、ΔL1、ΔL2増加したとする。 このとき普通の機体では、ΔL1、ΔL2が迎角を減らす方向にモーメントを発生する。これについて考える。 下図の全機空力中心とは、尾翼、主翼を考慮した空力中心という意味で、 ΔL1、ΔL2の合力が作用している点とみなすことができる。 全機空力中心より前に重心があることに注意して考える。

    水平尾翼3

    重心まわりで、ΔL1+ΔL2のモーメントとを考えると、このモーメントは頭下げモーメント、 つまり迎角を減らそうとするものであることは明らかだろう。 全機空力中心は、主翼と尾翼の面積をそれぞれの空力中心に置いた場合の面積重心にほぼ一致する。つまり、

    定理9
    S1 : 主翼面積
    S2 : 尾翼面積

    この全機空力中心より前に重心を置くと、迎角を一定に保とうとする性質が出てくる。 こうしてみると、水平尾翼の働きは、主翼の頭下げモーメントを打ち消し、 また、全機空力中心を後退させ、重心を置くことのできる範囲を広げるもの、とみなすことができる。 つまり、上の二つの点を考えて、安定するように設計できるのならば、水平尾翼はつけなくてもよいのである。 ただし、水平尾翼をつけずに飛行機が安定するように設計するのはかなり難しい。

  • 上反角について
    鳥人間コンテストの飛行機の主翼は、飛行中大きくたわんでいる。 この翼がたわんだ角度を、上反角といい、これは飛行機の横の動き、 つまりrollingに関する安定を保とうとすろ働きがある。 横に揺れたとき、つまり機体が横滑りしたときを考える。 いま、上反角Γをもつ機体が、飛行速度Vで飛行中、何かの原因で傾くと、 機体は翼の下がった方向に横滑りをおこす。このときの横滑りの速度をvとする。

    上反角1

    主翼には横滑り速度に等しい横風vがあたる。 そして上反角?があるため、翼面に垂直な成分vtanΓが生じる。この状態を真横から見る。

    上反角2

    むかって右側の翼には、本来の迎角α0に対して、α=vtanΓ/Vの迎角が加わったことになり、 この分だけ揚力が増える。これに対して、むかって左側の翼は揚力が減る。こうして生じた左右の揚力の差で、 傾いた機体を元に戻すモーメントが発生する。これが上反角効果である。

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